俺はずっと片想いを続けるだけ*2nd

天使が本当に望むもの~クリストファー

復学?
グレイスは結婚を機に王立学園高等部を辞めた。
本当は卒園まで通って貰うことに異存はなかった。

だけど、お前みたいな。
不埒な奴が居るから。 
辞めて貰った……だけど。

そこにグレイスの意思はなかった。
有無を言わさず、当然のように、婚約申し入れの席で父が言った。
否、俺の代わりに言ってくれたのだ。

リーヴァイス伯爵ご夫妻は頷いてくださった。
だが、グレイス本人は?
彼女の本当の気持ちは?


俺は隣に座るグレイスを伺った。
彼女は無言だった。
彼女の紫色の瞳は静かに真っ直ぐ、ドノヴァンを見ていた。


「奥様ご本人はどう思っていますか?
 私達と共に卒園したいと思われているでしょう?」

尋ねる風を装っているが、ドノヴァンには確証があるように見えた。


「おふたりのご結婚も急にでしたよね?
 私は聞いていませんでした。
 ちょっとした怪我で休んでいる間に貴女は学園を辞めて、ご結婚されました」

「急ではありません。
 9ヶ月間婚約していたのです」

こいつの言うちょっとした怪我は、女絡みだった。
人妻に手を出して、夫から懲らしめられたのだ。
父親の侯爵が金を積んで、男爵位の夫を黙らせた。

「……私は貴女が婚約していたなど、聞いていなかった」
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