色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅱ
 燭台に火を灯して。
 シナモンはテキパキと動いている。
「頭をタオルで冷やして。お布団かぶせて。汗かいているようでしたら着がえさせませんと。あと、大事なのは水分です。いっぱい水分摂らないと駄目ですよ」
「…シナモン詳しいんだね」
 あまりにも慣れた手つきでシナモンが動くので、感心するしかなかった。
「テイリー様が幼い頃、よく熱を出していたので看病したんです。だから、慣れています」
「幼い頃?」
 シナモンとテイリーは同い年ぐらいだというのに。
 そんな小さい頃からの付き合いなのかと思うと、シナモンって凄いんだなと思った。

「エアー様。あとは、誰かをお呼びして任せればよろしいのでは?」
「…うん。でも、もうちょっと彼に付き合うよ」
 シナモンの言う事は最もだけれど。
 彼の傍にいなきゃ…と思ってしまった。
「国家騎士団って大変なんだよね。きっと…」
 手のひらにはマメが潰れて滲んだ跡が残っている。
 傷だらけの手に、腕…
「ティルレット王国の騎士団の中でも、国家騎士団は特に大変だというのは聞いたことがあります」
 シナモンが太陽様の顔を眺めながら言った。
「辛い思いしているのに、一人で過ごすなんて寂しいよね」
 この家は、どこかおかしい。
 他人の家庭環境に突っ込むのはおかしいのかもしれないけど。
 病人を一人にしちゃ駄目だ。

 風が強いのか窓がカタカタと揺れる。
 会ってまだ2回目だというのに。
 私は、どういうわけか太陽様を酷く気の毒な人だと思ってしまった。
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