色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅱ
「あのお・・・」
 肩を誰かに揺すられて目を覚ました時、自分がどこにいるのかわからなかった。
 目の前に困った表情をした太陽様が見えると、「ぎゃあっ」と叫んだ。
 私の悲鳴にビックリしたのか、太陽様も「うぉっ」と身体がぴょんっと宙に浮いた。

 窓から差し込む光に、
 そうだ、昨晩から看病していたら寝てしまったのだという状況だとわかった。
 頭ではわかったけど。
 どうやって説明すればいいのかわからず、黙っていると。
「太陽様、お目覚めになられましたか?」
 振り返ると、シナモンが立っている。
「えっと…どちら様で?」
「失礼いたしました。わたくしエアー様の侍女でシナモンと申します。昨日、イチゴ様(・・・)より太陽様の看病をするようにとのご命令(・・・)でしたので、わたくしとエアー様で看病しました」
 一見、丁寧に言っているように聞こえるが、
 シナモンが静かに毒を含ませて言っていることがわかる。
 太陽様は一瞬、黙り込んだが、目を大きく見開いて、
「イチゴが!? すんません。ご迷惑をおかけしました」
 頭を下げる太陽様を見て。
 私はシナモンを見た。
 シナモンも私を見た。
 ・・・気まずい。
「ひとまず帰ります」
 私はそそくさと、シナモンの後ろに立つ。
「太陽様、勝手ながらキッチンを使わせてもらいました。食欲があるようでしたら、スープを作っておきましたので食べてください。では、これで失礼します」
 ペコリとシナモンが頭を下げる。
「どうも」と言って私はシナモンの後ろへと続く。

 変な体勢で寝てしまったせいか、足が痛い。
 外に出ると、容赦ない太陽の光が身体に当たる。
「やはり、エアー様はやさしい方ですね」
 シナモンは寝ていないはずなのに、表情はすっきりと穏やかだ。
 ゆっくりと2人で歩きながら、家を目指す。
「…やさしいのかな?」
 改めて言われると、わからなくなる。
「エアー様は心が凄く綺麗です。妖精の私がみじめになるくらい」
「…それって誉め言葉なのかな?」
 なんだか、よくわからなかったが、
 とにかく眠い。
 あくびを噛み殺しながら、少しは眠れるかなと考えた。
< 19 / 64 >

この作品をシェア

pagetop