11年目のバレンタイン〜恋を諦める最後の告白

「本当にごめんね、仕事の電話が入っちゃって…」

(嘘だ……仕事先の人を名字でなく名前で呼ぶなんてしないはずだよ……)

真人さんが戻ってきた時、彼は恥ずかしそうに照れ笑いをしていた。とても幸せそうで、恋人と会話をしてきたとしか思えない。

きっと、こうして匂わせてるんだろう。諦めの悪いわたしに、もう諦めるように……と。

それでもわたしは笑顔を貼り付けて、鈍感な幼なじみを演じた。

「え〜?本当に?なんか幸せそうだよーあやしいな〜実は、彼女からじゃないの?」
「………バカ、大人をからかうなよ」

あ、真人さんの顔がちょっと赤くなった。
自分で言い出したのに…自分でダメージを受けるなんて、ほんとバカだ……わたし。

でも、止められない。こうなったら、とことん知りたくて仕方なくなる。さらに傷つくのがわかっていても。

「なに〜?結婚の相談かな?プロポーズしたの?」
「……いや、まだだ」

ズキッ、と胸が痛んだ。

「えー早くしなよ!あんまりグズグズしてると逃げられちゃうよ?指輪は用意したの?」
「それもまだだが、早いところ用意しないといけないよな」

ズキンズキンと、胸が痛む。イタイ。痛くて涙が出そう。

でも、大丈夫。わたしは笑える。
10年間、バレンタインデーの告白以外ずっと幼なじみとして振る舞ってきた。
だから、大丈夫。


< 15 / 42 >

この作品をシェア

pagetop