11年目のバレンタイン〜恋を諦める最後の告白
かすかに唇を噛みしめてから、口角を上げて笑う。わざとらしくても、いい。
今のわたしの精一杯なんだから。
「えーさすがにハリー・ウィンストンは真人さんには無理でしょ?」
わたしがわざとおどけると、真人さんはムッとしたように眉を寄せた。
「バカにするなよ!これでもそこそこ稼いでるからな。その気になれば、ハリー・ウィンストンくらい買える!」
「アハハ、ムキにならなくていいよ!結婚するなら、色々お金もかかるでしょ?なら、そこそこのブランドでいいんじゃない?なら、ヴァンクリーフ&アーペルは?」
「……これでも100万近いじゃないか」
「ハリー・ウィンストンよりはリーズナブルでしょ」
「……むう」
うん、こうして軽口を叩きあってた方がマシだ。真剣に見ろ、なんて言われたら耐えられない。
「わぁーこれ、かわいいな……」
真人さんのスマホで検索して見つけた、4℃の指輪。シンプルでリーズナブル。石は小さいけど、もし自分がもらうなら…なんて想像してしまった。
「なにか、気になる指輪あったのか?」
「ううん、なんでもない!……それに、良いと思ったって…どうせわたしには縁がないもの」
(わたしも……今度は、好きな人にプロポーズしてほしいな……何年先かわからないけど……大切な人ができるといいな……)
真人さんを忘れるのに何年かかるかわからないけど……いつか、また好きな人ができるといいな、と思う。