初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
それとも、やはりシャルは皇太子の愛妾で、
俺が邪魔だから皇太子は……
だったらもう会いませんと誓えば、許して
帰して貰えるか?


目まぐるしく考えがあちらこちらに飛んで
纏まらなかった。


気が付けば、目の前の男が俺を見てた。
だからそんな目で俺を見るなと、思った。
そんなチビのギリアンと同じような。


「お前みたいな小者は捨て置けと、言われたが」

「……」

「これは俺の私情だ
 これからは俺の大切なものを傷つける可能性が 少しでもある者は排除すると、3年前に誓った」

「……何を、何言ってんだよ……
 意味わかんねえよ」

「お前がクリスティンとひと夏過ごした湖、行く
のは久しぶりだろう?
 あの女が底に沈んでから、水が濁ってしまってまるで沼の様だと、報告されている……
 さすが妖女だ」

「……」

「喜べ、お前は俺の代わりにあの女を片付けて
くれた
 御礼にお前の女神の所まで、送り届けてやる
からな」


もう男は俺を睨み付けてはいなかった。
その灰色の瞳は凪いでいる。


男は俺を逃がすつもりはない。



なぁ、シャル……、あの時、俺は。
お前のところに戻ると言ったけど……
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