初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました
季節限定のレモンタルトを食べ終わり、しばらく話をした。

このカフェに個室はなく、通されたのはホールから衝立で仕切られた、半個室と呼ばれるテーブルだった。
他の客とは顔を合わさないので、ゆっくりしすぎたかも知れない。

ホールの客の声が静かになった気がした。
少し空いてきたのだろう。


そろそろ帰りましょうと、エスコートするつもりで立ち上がった俺の手をクリスティン様が握った。
俺を見上げる瞳に涙を浮かべていた。

その瞳を見たら急に頭がクラクラして、もう一度椅子に座り込んだ。


『疲れたでしょう』と聞いたのは、俺が疲れていたからだ。
少し頭痛もした。
早く帰りたくて、期待を込めて聞いた。
だが疲れていないと言うので、しばらく付き合うしかない。

それからクリスティン様が言ってた話に適当に相槌を打った。
ずっと話は続いているようだったが、ぼんやり
していてよく聞き取れなかったから
『すみません』と謝った。

その後もシャルのこともぐずぐず言い出してきたので、勘弁して欲しかった。 
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