【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
 チェリチタの木に花が咲いてから、エルモの魔力が"グゥーーン"と上がったとグルはいう。

 それにたいして、当のエルモは学園で魔力測定はあったものの、授業で基本を習っただけ。

 魔法は使ったことがなく――なじみがないためか、わからないと首を傾げた。

「そっか」

 と、グルは答えたが。

 魔力をつねに扱う、グルは気付いていた。
 エルモがつくる料理を食べたあと――採取などでできたすり傷、転移魔法を使ったあとの消費した魔力の回復――あげたらキリがない。

 それはエルモのバイト先でもそのようで。
 エルモがいるだけで良い気が流れて、まえ以上に客が増え完売する時間がはやい。

 ――午前中にパンが売り切れたときもあった。

 そのことは、いま街でもひそかに噂にもなっている。
 あそこのパンを食べると腰痛、肩こり、膝の痛みがなくなる――火傷のあと、切り傷がきれいに治ったとか。

 先日。エルモに手伝ってもらった、ポーションの回復量が増えたとも言われた。

 そのことに関して嫌味な男――アルベルトがうすうす勘付いているかもしれない。

 いまは店の前で待っているだけだからいいが……目を離したすきに、エルモが攫われてしまいそうだ。

 

 いま、キッチンで夕飯のポトフを作るエルモにグルは。

「エルモ、体に変化とかはないのか?」

 と聞く。
 料理の手を止めてエルモは。

「ええ、体の変化? べつになにもないけど……あ、グルさんと一緒に寝るようになってから、たくさん眠れて、変な夢を見ないから調子がいいぐらい?」

 まえまでエルモは嫌な夢をみて、途中で目覚めることはなくなり、一度眠れば朝までグッスリねむれると。

「お、おお、そうか……それは俺もだな」

「ポトフできたよ、食べよう」
「ああ、食べよう」

 夕飯のときに呼んだ火の精霊たちが――白ちゃん、黒ちゃん以外に"エルモちゃん大精霊様に好かれた?"と、おしゃべりしていた。
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