【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
「茶、飲むじゃろ」

 ばっちゃんは急須と茶飲み茶碗を出すと、グルの分も入れた。
 そのお茶を飲み、一息ついて二人は話を再会させた。

「なあ、ばっちゃん。エルモのあの仕草は貴族のお嬢様みたいじゃなかったか? 今朝、エルモは帰るところがない、家を追い出されたと俺に言った」

 ばっちゃんは「そうかそうか」と頷き。

「どこかの令嬢か……そうかもな。あの背筋がピーンと伸びてきれいに歩く姿には品があった。……だが、このあたりで屋敷を追い出された令嬢の話は聞かない。もしかすると、エルモちゃんはどこか遠くの国から、この山間のサーティーアに来たのかもな」

「……上手く、サーティーアの言葉は話すけど、ばっちゃんの言うとおりそうかもしれないな」

「ワシはな、しっかり者で優しいお前さんの嫁にでもなれば、あの子はもっと笑顔になると思っておる……グル、頑張るのじゃよ」

「ああ、俺にできる範囲で頑張ってみる」
「できる範囲か……うん、うん、そのほうがいいな。グルはへんに背伸びをして、緊張して、ヘマをしそうじゃからの」

「ばっちゃん!」
「ふおっ、ふおっ」

 ばっちゃんは楽しそうに笑う。

「まったく……そうだ、いまから王都のギルドにポーションを納品に行くけど。ばっちゃんは何かいるものはあるか?」

「あるぞ、王都で有名なシュークリームが食べたいの、エルモちゃんの分もよろしくじゃ」

「シュークリームだな、わかった!」

 グルはばっちゃんの家を後にすると、一度家に戻り黒いローブを身につけて、ポーションを納品しに王都に向かった。
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