【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)
 ――あの頃とは違う、いまは気にせず好きなだけ見られる。


「……とても綺麗だね……ヘッ、クシュン」

「グ、グシュン」

 二人で大きなくしゃみをしてグレは鼻水を垂らした。

 その可愛らしい姿を微笑み見て、もう一度、夜空をながめる私の肩にグルは手を置き。

「春でも、この辺りは日が暮れると冷えてくるから、そろそろ家に帰ろうか。星々が見たければ暖かくなってから見に来ような」

「はい、みんなで見に来ましょう!」

「ギャオーン」

 グルの転移魔法で家へと帰って来た――カゴに採取したヨモギのことを聞くと。明日になったら、ばっちゃん家に持って行くと言い、グルは玄関にカゴを置いていた。



「ほら、エルモとグレはここ座って」

 エルモの手とグレを抱っこしてベッドに座らせると、グルは奥の部屋に行き大きなブランケットを二枚持ってきて、体を温めろと二人をグルグル巻きにした。

「次に温かい飲み物だな」

 キッチンでお湯を沸かして、フライパンを温めだす。

「グルさん、私も手伝います」

「だーめ、エルモは動くな!」

 と、沸いたお湯でコーヒーを入れて、グルはフライパンでチョコパンをあたためる。

「そうだ!」

 グルは指をパチンと鳴らして小さな火玉をだして『二人を温めてくれ』と、エルモ達の周りに火の玉を飛ばした。

「この火の玉、温かいけど……触っても大丈夫?」

「ああ、大丈夫。いま出したのは火のチビ精霊だから燃え移らないよ」


 ――火のチビ精霊?


『アハハハッ、燃やしちゃうぞ!』
『キャハハ、フフッ、燃やしちゃうぞ!』
『ボウ、ボウ!』


「きゃっ……この子達、私達のことを燃やしちゃうって、言っているわ」

「ギャオーン」

「こらっ、お前らエルモとグレに意地悪するなって……え、ええ? エルモ、チビ精霊の声が聞こえたのか? 精霊の姿は見える?」

「チビ精霊の姿?」

 グルは淹れたてのコーヒーをテーブルに置き、驚きの表情を浮かべていた。
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