【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)

(グルさんお酒に酔ってる!)

「お酒の飲み過ぎ、酔っ払い!」
「俺は酔ってねぇ」

 この言い合い広間の仲間達が集まってくるけど、すでに酔っ払いのみんなは「やれー!」とか「いけー、グル!」と指笛、手拍子、声で囃し立てた。

「グルさん、みんな見ているって!」

「ごめん、エルモ。止めたくても、自分では止められない」

「ウヒョッ! 激しいなぁ、グル」

「グレちゃん! そんなところで黙って見てないで、グルさんを止めて、みんなに見られて恥ずかしい!」

「いやー、無理だって」


「そんなぁ!」


 いいだけグリグリ、スリスリをやって、グルは満足したのか横に寝そべった。

(もう自分だけ満足したわね、許さない!)

「グルさーん、覚悟して!」
「え、おい、エルモ!」

 今度はエルモがグルの飛び付き、モッモフの胸に顔を埋めた。


(や、やわらかい、モフモフで気持ちい!)


「もふもふ、もふもふ」
「……あ、いや、エルモ!」

 恥ずかしさと、くすぐったからか逃げようとする、グルをキツく抱きしめた。

「ダメ! 逃さないんだからね!」

「ごめんて、エルモ」

 そこに狸の獣人さんが近付き、杯を上にあげる。

「ふぉっふおっ、わしの見立ては完璧じゃ! 皆のもの、二人の若いカップルに乾杯じゃ!」

「ばっちゃん!」
「おばちゃん?」

 満月の夜の宴会は朝方まで続き、グルはみんなに祝い酒を飲まされて撃沈した。
 広間の焚き火の近くに座り、エルモはみんなが楽しく酒を飲む姿をみて、村の人に貰った果物を貰って食べている。

(甘くて美味しい)

 グレは近くに来ると膝の上に登り、ゴロンと寛ぎ「弟共によろしくな」と言い、口を開けて食べている果物を要求した。

 それに酔っ払いグルは気付く。

「あー兄貴ぃ! そこは俺の場所だぞ」

「お前はデカすぎて無理だ、俺くらいなら丁度いい、羨ましいだろう」

「うう、羨ましい」
「ふふ、グルさんはここ」

 横をぽんぽんと叩くと寄ってきて寝そべった。その柔らかな毛を撫でながら思ったことつたえる。

「ねぇ、グルさん。私、グルさんに会えて幸せ」

「俺もエルモに会えて幸せだ。……できれば、もっとエルモに甘えたい」

 グルはエルモに顔を近付けて頬すりした。
 エルモは瞳を閉じて受け止める。

「いいですよ、甘えてください。その代わり私もたっぷり甘えますからね」

「いいぞ、どんとこい。俺はエルモをたくさん甘えさせてやる」

「じゃー、オレもエルモちゃんに甘える」

 グレはそう言って口を大きく開けた。
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