待てない柑士にひよりあり ~年上御曹司は大人げなくも独占欲が止められない~

 昔、私の祖父が『Orange Bakery』というベーカリーショップを経営していたが、父はベーカリーの経営にあまり興味がなく、もっと大きなことがしたいとベーカリーショップは祖父の代で畳み、全国チェーンの飲食店を作って業界に参入した。

 しかし、もとは小さな街のベーカリーの息子。
 父の経営手腕はそんなにいいものではなく、年の離れた私の兄の旭が経営を勉強して跡を継いでなんとか立て直していたのだが、経営状況は思わしくないことは感じていた。

 それでもこれまでは何とかつぶれることはなく持っていたと思っていた。
 なのに、突然この縁談だ。

「縁談って……これまで、縁談の類はお父さんも兄さんも断ってくれていたでしょ。うちってそんなに危ないの?」
「それは――」

「そうだ」

 父が言葉に詰まったのを見て、旭がパシリと加える。
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