待てない柑士にひよりあり ~年上御曹司は大人げなくも独占欲が止められない~
「……そうだったの」
私ひとりだけそれを知らずに、のほほんと暮らしていたわけだ。
うちではない会社に行きたいと言ったときも、兄も父も快く送り出してくれた。
特に兄は『お前はお前の人生を生きろ』とそんな声までかけてくれたし、それまでもそうできるように配慮してくれていたのは知っていたから。
申し訳なく思っていると、兄は頭をガバリと下げた。
「だから、ひより。お願いだ。この縁談を受けてくれ。この縁談が成立すれば、うちは銀行からの追加融資も受けられる」
「兄さん、顔をあげて」
そう言っても兄は顔をあげてはくれない。
その様子に、本当に危ないのだろうと推察した。