初恋を拗らせたワンコ彼氏が執着してきます
 銀髪、耳に複数のピアス、制服は着崩しまくっているが横顔は作り物のように端正で美しく目つきがやけに冷たく鋭い――それが当時高校2年生の透だった。

『女に振られたのをガキ相手に憂さ晴らしなんて、ちいせーな』
『テメェ、ふざけんな!』
 顔を真っ赤にした男が透の胸ぐらを掴んだ。しかし彼は抵抗する様子も見せない。

(だめ、あの子ボコボコにされちゃう!)

『お巡りさん! こっちです! こっちで高校生が暴力振るわれてますっ!』
 唯花は咄嗟に叫んだ。
 男たちがビクッと固まり、胸ぐらを掴んでいた男の手が緩んだ。
 それを見た唯花は男たちの間に体ごと突っ込んで行った。そして、透の手を取って男から引きはがすと、手を繋いだまま反対方向に身を翻し猛然とダッシュした。とにかくこの場から逃がさなければという思いだけで夢中で走った。

 もう男達には追い付けない距離はかせいだというところでやっと立ち止まる。

『はぁ、ここまで……くれば、はぁ、だ、大丈夫……』
 今までこんなに必死に走ったことはない。肩で息をしながら掴んでいた手を放し透を見ると、彼も息を上げていた。

『……あんたバカか? 助けてほしいなんて言ってねぇのに……ああ、それとも俺の身体目当て?』
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