初恋を拗らせたワンコ彼氏が執着してきます
 眼鏡の奥の瞳が悲しげでかわいそうになってしまう。

「だ、大丈夫だよ。島津くんは結構イケメンだし仕事もできるから。それにこうやって同期を手伝ってくれる優しさもあるでしょ」

 唯花は笑顔を作って島津の肩をポンポンと優しく叩いて慰める。なんだか他人ごとに思えなかったのだ。

「佐山……」
 なぜか唯花を見る島津の頬が赤い。どうしたと思っていたら、後ろから甲高い声がした。

「あら、佐山さん、島津さんお疲れ様です!」
 いつの間にかパステルカラーのワンピース姿の愛奈が打ち合わせコーナーの横に立っていた。

「あぁ、奥村さん、お疲れ様。あれ、営業の折原くんも一緒なのか」
 愛奈のすぐ横にスーツ姿の透が立っていた。こちらを見る視線がやけに鋭いような気がする。

(なんで、折原君が奥村さんと?)

「ふふっ、私たちこれからディナーに行くんです。今日初めてじゃないんですけどね。私が居室に忘れものしちゃったから一緒に戻って貰ったんです。透さん優しいから」

 聞いてもいないのに愛奈は教えてくれる。しかも透、と名前呼びだ。
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