初恋を拗らせたワンコ彼氏が執着してきます
 愛奈が熱い視線を向けている彼は折原(とおる)、開発部所属の25歳。
 180cm近い高身長に均整の取れた体つき、ダークブラウンの髪に艶々の肌、はっきりとした二重のアーモンドアイに笑みを湛えたような柔和な口元。
 身に着けているのは白いシャツに細身の黒いパンツに紺のジャケットでノーネクタイのオフィスカジュアルスタイルだ。
 その爽やかな存在感に居室にいた職員の視線が自然と引き寄せられている。
 
 4か月前に親会社からの出向で営業部に配属されているエリート若手社員。上司の評価も高いという。
 
 そのルックスと人当たりのよさもあり“折原王子”と女性社員の人気がすごいことになっている。
 そろそろ熱視線で彼の体にハート型の穴が開くのではと心配になるほどだ。

 愛奈も彼をロックオンしているらしい。

「折原さんの質問なら、私、何でも答えちゃいますぅ」

 ニコニコと語尾にハートをつけながら上目遣いで透に話してアピールしているが、彼はその柔和な笑顔を崩さないままスルーする。

「いえ、ちょっとイレギュラーな案件なんです。研究費の処理の関係で……」

“あなたじゃ分からない質問だ”と暗に言われているのを理解したのか愛奈は「そ、そうなんですか……」と勢いをなくす。
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