怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
 よく知っている道を通るだけで懐かしさがこみ上げてくる。
 実家の前で止めてもらい、私はタクシーを降りた。

 もし更地になっていたらすぐに帰るつもりでいたけれど、家はそのままの状態で建っていた。
 今は空き家なのだろうか? 表札もないし明かりもついていない。
 門扉周辺などに雑草が生えていてもおかしくないのに、ずいぶんとスッキリしている。 
 道路にある落ち葉も家の前にはひとつも落ちていないので、まるでだれかが()き掃除をしたみたいだ。

 ということは新しい人がすでにお住まいなのかもしれない。
 家を取り壊さずに住んでもらえているのなら、そのほうが私もうれしい。

 庭がどうなっているのか気になって横の路地に回り込んでみたものの、薄暗くてよく見えなかった。
 あまりじろじろと観察していたら不審者と間違われる気がして、うっかり通報されてはかなわないので踵を返す。

 門扉のところまで戻ってきたちょうどそのとき、中から人が出てきて瞬間的にあわててしまった。
「以前住んでいた者です」とあいさつをするのもおかしいかなと思案していたら、その人が私のよく知る人物だと気づいた。

 
「久米さん?」

「あ、冬璃さん!」


 声をかけた私のほうへ振り返った途端、困ったように目を泳がせる久米さんがそこにいた。
 彼女とは電話やメールでやり取りはしていたが、顔を見るのは久しぶりだ。

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