怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
 どうやら父は神戸に出張していたのではなく、横領されたお金を取り戻そうとしていたようだ。
 どうせあちこち遊び歩いているのだろうと思っていたが、私の想像とは全然違っていた。


「不渡りを出せば銀行からの信用が失墜しますので、取引ができなくなります。すなわち倒産に追い込まれます」

「なにか手はありますか?」

「うちが手助けしようにも足りる額ではないんです。ほかの銀行に融資をお願いするにしても審査に時間がかかるので、そのあいだに支払い期日が来てしまいます」


 九住さんはそう口にしながらも、打つ手を考えているみたいだ。
 私には到底無理だけれど、彼女ならば起死回生の一手が浮かぶのではないかと勝手に期待してしまうのだが、なにはともあれ時間がない。


「期日はいつですか?」

「一週間後です」


 まだ一週間ある。……いや、悠長に構えている場合ではない。
 我が社は㈱グローイングとは経営は別だとはいえ一心同体のようなものだ。あちらが倒れたらこちらも無事では済まない。


「なかなか厳しいですね。工藤さんが奪ったお金をどうしたのかわからないですし……」

「そうですね。でも安西さんもおられますから、力になってくれるはずです」


 一番いいのは横領されたお金が戻ってくることだ。
 だからこそ父は工藤さんを捕らえるためにいち早く動いたのだろう。
 こんなにおおごとになる前に収拾したかった、という見栄もあるのだと思う。

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