3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
「声をかけなくてもいいの?」

「うん、手術の合間の休憩みたいだし、他の先生もいるから迷惑になるだろうから」

「そんなことはないと思うけどなぁ。だって疲れている時に愛する妻に会えたら嬉しいものじゃない」

 今にも私の背中を押して、話してきなよと言い出しそうな奈津希に先手を打つ。

「奈津希、メイク直しもするんでしょ? だったら急がないと休憩時間終わっちゃうよ」

「本当だ、やばい」

 先に歩き出した奈津希に胸を撫で下ろしながら私も後を追う。その途中に離れていく理人さんの後ろ姿を見る。

 よく考えると私は理人さんのことをほとんど知らない。大変な仕事だと認識していたけど、一緒に暮らして想像以上の激務だと思い知った。
 いくら契約の関係でお互いの生活に干渉しないといっても、さすがに心配するレベルだ。

 来月にはオペの数も減って落ち着くと言っていたけど、その前に理人さんが倒れない? なにか私にできることはないのかな。

 考えてみたものの、医者じゃない私にはなにも力になれることは思い浮かばない。ただ、いつ帰ってきてもお風呂に入って疲れを取れるようにするくらいだった。

 あとは不仲だと思われないように立ち振る舞うこと。彼のおかげで祖母を安心させることができて、贅沢な暮らしをさせてもらえているのに、なにも返せない自分にやりきれなさを感じながら午後の勤務に就いた。
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