幸せのつかみ方

直幸の傷

ゴーヤを使った料理を数種類作ってリビングのテーブルに並べた。

まだ明るい時間だったが、直幸が持ってきたビールを開けた。

「やっぱり千夏の作るご飯はおいしいな」
「うん、おいしい」
しっかりとワタを取り、薄切りにして湯通ししたゴーヤは苦みが薄くなって丁度いい苦さとなっていた。
美味しい、おいしいと食べてもらえるのはやはり嬉しいなと顔がほころぶ。

私達はたくさん食べてたくさん飲んでたくさん話した。

直幸は飲み過ぎて顔を赤くしていた。

コップに水を注いできて、手渡す。

ありがとうと言って一気に水を飲み干した直幸は、「ところで」と前置きを告げて、
「二人はやり直さないの?」
と聞いてきた。

「「え?」」
裕太と私は驚いて直幸を同時に見た。

「息がぴったり」
とけたけた笑った直幸は、再度、
「父さんと母さんは復縁しないの?」
と言った。

「ないな」
と裕太が困ったように笑って言った。

「そっか・・・」
と呟いた直幸は箸をおき、深々と頭を下げて、
「正月に、帰らなくてごめん」
と謝った。

「二人のことが嫌とか、家が嫌で帰ってこなかったとか、そういうつもりじゃなかったんだ。
でも、ごめん」
直幸は、私が出て行った時のあのお正月のことを言っているのだろう。

「うん。そんなこと分かってるわよ」
「家に帰らないなんて、大人になったってことだろう?」
「そうそう、大きくなったなあってむしろ嬉しいことよ」
謝る直幸に裕太と私は努めて明るく話しかけた。
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