幸せのつかみ方



そもそも、このレストランで食事は、息子の直幸からプレゼントだ。


この春から、直幸は社会人として働き始めた。
某飲料メーカーに就職が決まった直幸は、研修期間を終え、営業に配属された。

「忙しいし、分からないこともたくさんあるけど、楽しい」
と、細目にメールをくれる直幸。

そんな直幸から電話がかかってきた。
メールは頻繁にあるが、電話というのは久しぶりだった。

「いきなりどうしたのよ?何かあった?」
『何もない。けど、お給料が3回出た』
「うん。そりゃ働いて3か月たつもんね」
『それで、母さんと父さんに食事をごちそうしたいと思ってさ』
「え?!いいわよ、そんなの。そんなことより、自分のために使いなさい」
『もう予約した』
「え?」
『母さんが予定ないってのはリサーチ済みだから。キャンセル不可ね』
「相変わらず直幸は強引ねー。でも、ありがとう。嬉しいわ」
『場所はまたメールで送るから。絶対に来てくれよ』
「分かった。楽しみにしてるわね」



そう電話で話したのが先週のことだった。



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