幸せのつかみ方
樹さんは私の好きなことをよく知っている気がする。
こんなふうにいいタイミングでお散歩を提案してくるあたり、誘うのが上手いなと感心してしまう。
ただ、樹さんの電話の声は普段聞くよりも少しかすれていて、疲れているのかなと心配になった。
それがまた色っぽく聞こえたから困ってしまう。


樹さんの低い電話越しの声を思い出しながら、私は布団に入ったーーー直後。





がばっ!!!
布団を勢いよくめくりあげ、起き上がった。




明後日の土曜日。
私は樹さんと中華街にドライブしてお散歩するだけ。

久しぶりの遠出。
しかも興味のあったお散歩だ。

わくわくしている自分の感情。純粋にわくわくできるんだって思うと嬉しくなった。


それだけ!
樹さんを意識したんじゃない!


「もう恋愛はしないんだから」


布団をなおし、目を閉じた。
今度は樹さんのことは考えずに寝ようと思った。
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