変態御曹司の飼い猫はわたしです
***

「珠希、ほら、あーん」

 婚約した私たちは、相変わらず一ノ瀬さんのご実家で二人暮らしをしている。

 だが、変わったこともある。
 
 思いが通じ合ってからは、同じベッドで眠るようになったのだ。すると、眠るのは夜更けや明け方になることも多く、結構体力の限界を感じている。私の方が若いはずなのに、一ノ瀬さんはいつでも爽やかで、余裕そうなのが悔しい。

 今も、情事の後だというのに、ベッドで寝たまま動けない私に、餌付けをしている。
 
「い、一ノ瀬さん、恥ずかしいですから! 自分で食べますから!」

「珠希、呼び方間違えてる。罰として、あーん」 

 猫扱いの頃にハマったのか、やたら『あーん』したがる。

 そして、私が『雅人さん』と呼ぶまで、罰ゲームと称して、キスやハグや餌付けをしてくるのだ。

「これは空輸して取り寄せた、フランス製のトリュフ。人肌で溶けちゃうんだよ? 僕の指で溶けちゃうから。ほら、早く食べて!」

 雅人さんの長くて綺麗な指に、美味しそうなトリュフ。つい口を大きく開けてしまう。
口に入れられるとすぐに溶けて、上品な甘さが口に広がる。美味しい!

「可愛い」

 私が美味しくトリュフを味わう様子を眺めながら、雅人さんが笑う。そして頭をヨシヨシされた。

(私、まだ猫扱いされてません?)

 だけどそれも嫌じゃない自分もいる。雅人さんに、人に甘えることの安心感を覚えさせられてしまった。
 長い闘病生活をしていた父とその介護や仕事に必死だった母。なかなか甘えられなかった時期を過ごして、今、雅人さんに甘えさせてもらうのが驚くほどに心地よい。雅人さんの胸に頭を擦り寄せる。温かい体温に安心する。

 すり寄ってきた私を優しく抱擁してくれた。

「タマちゃん愛してる」
「雅人さんも呼び方!」

 私に指摘されても、雅人さんは余裕そうに笑う。そしてとびきり濃厚なキスをしてきた。「チョコ、美味しいね」と甘く囁く。

 もう日が高くなりつつあるのに、私たちはもう少しベッドから出られそうもない。

「僕だけの──」

 私を甘やかす雅人さんは、もしかしたら本当に変態なのかもしれないな、と思いつつ。
 でも、雅人さんが好きだからいいか、と彼に翻弄されながら、私は考えることを放棄して、彼の愛に溺れたのだった。


*END*
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