愛のバランス
倫也との出会いは、結婚相談所からの紹介だった。
当時の麻里絵は心に深い傷を負っていた。将来を誓い合った恋人との突然の別れによって、絶望の淵に沈んでいた。彼は大企業の社長の息子で、お見合い結婚することになったのだ。
彼以上に好きになれる人に巡り合うことなど、この先絶対にないと思っていたし、もう恋愛するつもりもなかった。けれど、一生一人でいるのはやはり寂しかった。
優しさが欲しい。温もりが欲しい。
麻里絵は自棄を起こす気力さえも失っていた。この傷を癒すことが出来るのは、励ましてくれる親でもなく、連れ出してくれる友人でもなく、優しく寄り添ってくれる男性だろうと思った。

麻里絵は、高額な入会金と月会費を払って結婚相談所に登録した。
高額な料金を払うということは、それだけ真剣に結婚を考えている人が集まるということだろう。どうせなら、そういった相手と結婚したいと考えたのだ。
そうして出会ったのが倫也だった。

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