愛のバランス
倫也もまた麻里絵と同じように、恋人との別れによって心に傷を負っていた。麻里絵と違うところと言えば、倫也の場合は相手の浮気が原因だということだったが、どちらにしても、恋人を失い辛い心境だということに違いはなかった。
倫也も癒しを求めて婚活を始めたようで、お互いその日が初めてのお見合いだった。麻里絵が二十七歳、倫也が三十歳の時だった。

こんな良からぬ共通点を持った二人が一緒にいては、傷の舐め合いになるだけなのではないか、と少し不安を抱いたが、倫也の誠実な人柄に惹かれ、仮交際へと進んだ。 

穏やかな性格の倫也といると、傷付いた心が徐々に癒されていくのを麻里絵は感じた。
倫也は、麻里絵の別れた恋人の話も真剣に聞いてくれた。
『俺は普通のサラリーマンの家庭で育ったから分からないけど、やっぱり背負ってるものが違うからね。後継者になるって色んな問題があるんだと思う。相手も苦渋の決断だったと思うよ』と言った後、『辛かったね』と心の底からだと思える慰めの言葉をかけてくれ、『急がないから』と関係をゆっくりと進めてくれた。


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