愛のバランス
それから数回デートらしいことをしたが、やはり心に空いた穴は塞がりそうにはなく、誠実に接してくれる倫也に申し訳ないと思った麻里絵は、正直に話そうと決心した。
別れた恋人を忘れられずにいること。もしも彼と寄りを戻せることになれば、彼を選ぶだろうという気持ちを持っていること――
全てを包み隠さずに話すと、倫也は「正直に話してくれてありがとう」と言い、麻里絵の気持ちを理解して納得した上で、正式に交際を申し込んできた。もちろん結婚前提だった。

「一人の人をそんなにも一途に愛せる心を持っている麻里絵ちゃんに惚れた」と倫也は言った。そして、「麻里絵ちゃんの傷が癒えて、その気持ちを俺に向けてくれるようになるまで傍にいたい」とも言った。
その言葉通り、倫也はずっと傍にいてくれ、いつも優しく包み込んでくれた。いつしか麻里絵はそんな倫也に心を開き、彼の一途な愛に応えたいと思うようになっていた。そして交際から二年後、倫也からのプロポーズを受けて結婚に至ったのだ。

「これからもずっと麻里絵の傍にいたい。大切にする」

倫也はそう言ってくれた。

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