愛のバランス
『はい』

感情のない声で倫也が言った。

「倫くん? 私、麻里絵」

どこかすがるように、自分の名前を口にした。

『わかってるよ』

そっけない返事があった。

「ねえ、どういうこと? ちゃんと説明してよ」

なぜこんな風に突き放されているのか、思いあたる理由がない。

『じゃあ、今から伝える番号に電話して』

「え?」

じゃあ、の意味がわからない。

三條場(さんじょうば)さんの番号だよ』

「え?」

麻里絵の知る三條場は――

三條場(さんじょうば)寛人(ひろと)さんって言えばわかる?』

「え!? 何で――」

三條場寛人は、麻里絵の元カレの名前だ。
彼の名前を、倫也の口から聞くなんて思ってもいなかった。

『電話したらわかるから。じゃあね』

一方的にそう言い残して、プツンと電話が切れた。
麻里絵はしばらく、スマホを手にしたまま動けなかった。
何が起きているのか、全く理解できない。
それでも、理由が知りたい一心で、麻里絵は教えられた番号に電話をかけた。

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