友達婚~5年もあいつに片想い~
「梨衣。一家離散って事は、家族とは離れてるって事だろう。会っているのか?」

「ううん。会っていないけれど。」

「だとしたら。」

大樹は赤信号で停止した時に、私を抱き寄せた。

「俺が梨衣の家族になるから、もう一人じゃない。」

ありきたりな言葉だったけれど、胸にスーッと入ってきた。

「大樹。」

「なに?」

「ありがと。」

私は目から滴り落ちる涙を、抑えきれなかった。


本当は、家族が欲しかった。

一人じゃないって、誰かに言って欲しかった。

それが、好きな人から言って貰った事に、胸がジーンとして、涙が溢れた。

「梨衣、兄弟は?」

「ああ、兄がいるけれど、父方に引き取られて、それっきり。」

「ご両親、離婚したの?」

「ううん。父が他界して、私は母方に引き取られたんだけど。」
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