爪先からムスク、指先からフィトンチッド
言葉に詰まる芳香に真菜は優しく話しかける。
「いいよいいよ。大丈夫なら気にしない気にしない」
「ん」
彼女は外見はふんわりとした可愛らしい女性であるが、実は面倒見がよく姉御肌でしかもさっぱりとした性格だ。
無理に聞き出すともせず、その場のおしゃべりを楽しもうとする真菜が芳香は大好きだった。
「この、つくね美味しいねえ」
「ねー。ほらこの梅肉巻いたばら肉も美味しいよ」
「ほんとだー」
アルコールもほど良く回り二人は会社の噂話に花を咲かせる。
「最近さあ、匂宮さまがよくうちの階にいるねえ」
「えっ、そ、そうなの?」
「うん、前は週に一回見るかどうかだったけど、ここんとこ毎日一回は見るよ。いつもカッコイイよねえー、しかも、ふわっと素敵な香りさせてさあ」
「そうなんだ、私はちょうど見かけないなあ」
「あらーもったいない、目の保養なのにぃ。ほかの娘たちもきゃあきゃあ言ってるよー。通ったあとはみんな残り香嗅いでるものっ」
「あははっ……」
毎週、間近で見て、足を触られていると言ったら真菜はどんな顔をするだろうか。少し酔いがさめ芳香はため息をついた。
秘密にしているわけでも口止めされているわけでもないが、人に話しづらいことだ。
おまけに検体になり薫樹と会っている話を真菜にしてしまうと、消えそうになっている淡い恋心をまた自覚しかねない。報われない恋の相談になりそうだ。
俯き加減の芳香に気づき、真菜は「どうかした? 酔っちゃった? 気分悪いの?」と優しく尋ねてくる。
「えっと、あの……」
ずっと隠してきたことを、薫樹のことではなく、自分のことを打ち明けられたらどうなるのだろうかと、芳香は不安と開放をいっぺんに感じる。
「お茶でも飲もっか。――スミマセーン、ウーロン茶二つくださーい」
「あ、ありがと」
酔いを醒まし、初夏の夜風に当たりながら二人は歩く。
「楽しかったねー。また今度飲みにいこっか」
「うん、行きたい! すっごく楽しかった」
今度はもう少し、自分の事を話したいと芳香は考えている。それでもいつの間にか二人は「芳香ちゃん」「真菜ちゃん」と呼び合うようになっていた。
14 完成の先は
完成したボディシートはとても評判の良いものとなった。『ボディシート イン フォレスト』今、日本で一番売れているシートだ。
「いいよいいよ。大丈夫なら気にしない気にしない」
「ん」
彼女は外見はふんわりとした可愛らしい女性であるが、実は面倒見がよく姉御肌でしかもさっぱりとした性格だ。
無理に聞き出すともせず、その場のおしゃべりを楽しもうとする真菜が芳香は大好きだった。
「この、つくね美味しいねえ」
「ねー。ほらこの梅肉巻いたばら肉も美味しいよ」
「ほんとだー」
アルコールもほど良く回り二人は会社の噂話に花を咲かせる。
「最近さあ、匂宮さまがよくうちの階にいるねえ」
「えっ、そ、そうなの?」
「うん、前は週に一回見るかどうかだったけど、ここんとこ毎日一回は見るよ。いつもカッコイイよねえー、しかも、ふわっと素敵な香りさせてさあ」
「そうなんだ、私はちょうど見かけないなあ」
「あらーもったいない、目の保養なのにぃ。ほかの娘たちもきゃあきゃあ言ってるよー。通ったあとはみんな残り香嗅いでるものっ」
「あははっ……」
毎週、間近で見て、足を触られていると言ったら真菜はどんな顔をするだろうか。少し酔いがさめ芳香はため息をついた。
秘密にしているわけでも口止めされているわけでもないが、人に話しづらいことだ。
おまけに検体になり薫樹と会っている話を真菜にしてしまうと、消えそうになっている淡い恋心をまた自覚しかねない。報われない恋の相談になりそうだ。
俯き加減の芳香に気づき、真菜は「どうかした? 酔っちゃった? 気分悪いの?」と優しく尋ねてくる。
「えっと、あの……」
ずっと隠してきたことを、薫樹のことではなく、自分のことを打ち明けられたらどうなるのだろうかと、芳香は不安と開放をいっぺんに感じる。
「お茶でも飲もっか。――スミマセーン、ウーロン茶二つくださーい」
「あ、ありがと」
酔いを醒まし、初夏の夜風に当たりながら二人は歩く。
「楽しかったねー。また今度飲みにいこっか」
「うん、行きたい! すっごく楽しかった」
今度はもう少し、自分の事を話したいと芳香は考えている。それでもいつの間にか二人は「芳香ちゃん」「真菜ちゃん」と呼び合うようになっていた。
14 完成の先は
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