爪先からムスク、指先からフィトンチッド
今日の美月はコマーシャルの印象とは全く違い、ツヤツヤしたピンクゴールドのワンピースでキュートな女の子だ。
薫樹はラフではあるが薄いブルーのドレスシャツで、相変わらずクールさを引き立たせている。
髪や肌の色素の薄さは彼の硬質な雰囲気を柔らかく品の良さに変えているようだ。
「お内裏様とフランス人形みたいだったなあー」
写真を撮りたいくらいに綺麗な二人を目の当たりにすると、嫉妬するよりも納得してしまうのだった。
薫樹が自分の事をフィアンセと紹介してくれていることが芳香にとって嬉しいと、今はまだ素直に思えない。
長らく湯船につかり、今夜のことを思いながら身体を撫でたが、気分が暗くなってきたので上がることにした。
芳香が身体を拭いていると、薫樹がやってきた。
「ああ、もう出るのか。一緒に入ろうかと思たんだが」
「あ、彼女、帰ったんですか?」
「うん、待たせて悪かった」
「いえ、仕事ならしょうがないですよね」
「ん。――冷えるといけないから早く服を着たほうがいい」
「そうします」
芳香はバスタオル一枚の半裸なのに薫樹は特に気にするふうでもなく、シャツのボタンを外し始める。
恋人同士でもまだ付き合いが浅いのだから裸を気にしたりはしないのだろうかと思いながら芳香は言われたとおりにパジャマを着る。
男だからなのか薫樹は恥じらうこともなくすっかりヌードになり浴室へ入っていった。
長身で細身の背中がまるで白い蛇のような怪しさを感じさせる。初めてのベッドで彼の身体が芳香の身体の上を這うように滑らかに動いたことを思い出す。
「見ちゃうと恥ずかしいな」
挙動不審になりながら芳香は浴室を後にした。
4 浴室にて・2
浴槽では珍しく薫樹が頭を悩ませていた。
「面倒だなあ」
野島美月が仕事のことでの相談というのは口実で実際は薫樹を口説きに来ていた。芳香がいたのでしつこく長居はしなかったが、「また来ます」という言葉には正直まいる。
ボディーシートのイメージガールを選ぶときに、モデルたちの宣材写真を眺めたが、シートの完成に満足していたので誰でも良く、周囲の有力者が美月を選んだ。美月に対して薫樹は何の感情も抱いていない。これからもないだろう。
今までもそうだったように迫られても心が動かなかったため全く相手にしなかった。たとえ、周囲が憶測し、勝手に噂を流されても、平常通りの薫樹にいつの間にか、噂も相手も消えている。
今回もそのように振舞えばよいのだが、問題は芳香だ。
彼女はこういう状況には勿論不慣れであるし、略奪に対して引いてしまう方だろう。強気に出て張り合うことはない。付き合ってそばにいて分かったことだが、芳香は感情の起伏と匂いのオンオフが揃っている。
勿論常人には感じられない程度ではあるが、喜んでいるときや嬉しいときは麝香の香りが強くなる。そして否定的な感情の時に香りが薄まるのだった。
「あの子のせいで、今夜はきっと芳香の匂いが楽しめないな……」
残念だが、これからいくらでも時間はあるという結論で薫樹は次の手を考え始めていた。
5 フィトンチッドの効果・1
寝室は広々としてベッドもキングサイズだ。気持ち良く潜って入るが芳香はこのベッドのサイズがどうして個人に必要なのかと思う。薫樹は女性と付き合ったことがないと言っていたが、この広さは一体何なのだろうか。
「まさか、えっちだけはするとか……」
薫樹はラフではあるが薄いブルーのドレスシャツで、相変わらずクールさを引き立たせている。
髪や肌の色素の薄さは彼の硬質な雰囲気を柔らかく品の良さに変えているようだ。
「お内裏様とフランス人形みたいだったなあー」
写真を撮りたいくらいに綺麗な二人を目の当たりにすると、嫉妬するよりも納得してしまうのだった。
薫樹が自分の事をフィアンセと紹介してくれていることが芳香にとって嬉しいと、今はまだ素直に思えない。
長らく湯船につかり、今夜のことを思いながら身体を撫でたが、気分が暗くなってきたので上がることにした。
芳香が身体を拭いていると、薫樹がやってきた。
「ああ、もう出るのか。一緒に入ろうかと思たんだが」
「あ、彼女、帰ったんですか?」
「うん、待たせて悪かった」
「いえ、仕事ならしょうがないですよね」
「ん。――冷えるといけないから早く服を着たほうがいい」
「そうします」
芳香はバスタオル一枚の半裸なのに薫樹は特に気にするふうでもなく、シャツのボタンを外し始める。
恋人同士でもまだ付き合いが浅いのだから裸を気にしたりはしないのだろうかと思いながら芳香は言われたとおりにパジャマを着る。
男だからなのか薫樹は恥じらうこともなくすっかりヌードになり浴室へ入っていった。
長身で細身の背中がまるで白い蛇のような怪しさを感じさせる。初めてのベッドで彼の身体が芳香の身体の上を這うように滑らかに動いたことを思い出す。
「見ちゃうと恥ずかしいな」
挙動不審になりながら芳香は浴室を後にした。
4 浴室にて・2
浴槽では珍しく薫樹が頭を悩ませていた。
「面倒だなあ」
野島美月が仕事のことでの相談というのは口実で実際は薫樹を口説きに来ていた。芳香がいたのでしつこく長居はしなかったが、「また来ます」という言葉には正直まいる。
ボディーシートのイメージガールを選ぶときに、モデルたちの宣材写真を眺めたが、シートの完成に満足していたので誰でも良く、周囲の有力者が美月を選んだ。美月に対して薫樹は何の感情も抱いていない。これからもないだろう。
今までもそうだったように迫られても心が動かなかったため全く相手にしなかった。たとえ、周囲が憶測し、勝手に噂を流されても、平常通りの薫樹にいつの間にか、噂も相手も消えている。
今回もそのように振舞えばよいのだが、問題は芳香だ。
彼女はこういう状況には勿論不慣れであるし、略奪に対して引いてしまう方だろう。強気に出て張り合うことはない。付き合ってそばにいて分かったことだが、芳香は感情の起伏と匂いのオンオフが揃っている。
勿論常人には感じられない程度ではあるが、喜んでいるときや嬉しいときは麝香の香りが強くなる。そして否定的な感情の時に香りが薄まるのだった。
「あの子のせいで、今夜はきっと芳香の匂いが楽しめないな……」
残念だが、これからいくらでも時間はあるという結論で薫樹は次の手を考え始めていた。
5 フィトンチッドの効果・1
寝室は広々としてベッドもキングサイズだ。気持ち良く潜って入るが芳香はこのベッドのサイズがどうして個人に必要なのかと思う。薫樹は女性と付き合ったことがないと言っていたが、この広さは一体何なのだろうか。
「まさか、えっちだけはするとか……」