爪先からムスク、指先からフィトンチッド
「いやいや、いい意見だよありがとう。ミントで何か鍋とかどうかなあ。ちょっとまた考えてみよう」
仕事に真剣に向き合っている姿は恰好いいんだなと芳香は涼介を見つめた。
「じゃあ、この辺で私は失礼します」
「ああ、待って。急いでる?」
「いえ、そういうわけじゃありませんけど」
「ご飯でも行こうよ。夜、何か約束がある? 今日、兵部さん出張中でしょ?」
「よくご存じで……。でもほかの男性と食事するとかってちょっと……」
「ええー。ご飯だけだよ? 兵部さんが怒るかなあ。ちょっと待ってて」
薫樹ははたして怒るのだろうかと考えていると、涼介はスマートフォンをさっと取り出し電話を始めた。
「――そうですか。わかりました。きっちり最後までエスコートしますからご心配なく」
電話を切り芳香の方へ向き直る。
「兵部さん良いってさ」
「ええ!?」
「今電話で聞いたら、よろしくって言ってたよ」
「……」
「いこうよ、すぐ近くに美味しい串料理屋があるんだ」
薫樹がダメだと言わないことが芳香を複雑な気分にさせる。
「ですね、じゃ、いきます」
あまり気分が乗らないが夕飯をまだ決めていなかったのでついて行くことにした。
4 続・ミントの効果
明るく元気な掛け声で迎えられ、串料理屋に入る。
まだ早い時間なのに座敷は一杯でカウンターしか席は空いていないようだ。
「ああ、残念。座敷の方が楽だよねえ」
「あ、いえ。私、カウンターの方が好きなんですよ」
今でも人前で靴を脱ぐことが躊躇われる芳香にとって、座敷に案内されるより随分気が楽だ。
今日はよく歩いていたようで、肉の焼けた匂いが芳香の空腹を促す。
「お腹空いてきたなあ」
「ははっ、いっぱい食べてよ。ここはさあ、いろんな串があるんだよ。ほら、シュラスコとか」
炭火で焼かれた肉が大きな串に刺され、カップルが嬉しそうに店員から受け取っている。目の前のメニューを見ると串カツなど揚げ物もあり、焼き鳥、シシカバブなど多国籍な串料理が並んでいる。
「へえ、美味しそう」
「しかもここはね、飲み物も色々あるんだ。お酒飲める?」
「え、強くはありませんが、少しなら」
「じゃ、とりあえずモヒート二つ」
涼介が飲み物を注文し、少しずつ串ものを頼んだ。
「じゃ、かんぱーい」
「あ、乾杯」
初めて飲むロングスタイルのモヒートの匂いを嗅ぎ、芳香はそっと口をつける。
仕事に真剣に向き合っている姿は恰好いいんだなと芳香は涼介を見つめた。
「じゃあ、この辺で私は失礼します」
「ああ、待って。急いでる?」
「いえ、そういうわけじゃありませんけど」
「ご飯でも行こうよ。夜、何か約束がある? 今日、兵部さん出張中でしょ?」
「よくご存じで……。でもほかの男性と食事するとかってちょっと……」
「ええー。ご飯だけだよ? 兵部さんが怒るかなあ。ちょっと待ってて」
薫樹ははたして怒るのだろうかと考えていると、涼介はスマートフォンをさっと取り出し電話を始めた。
「――そうですか。わかりました。きっちり最後までエスコートしますからご心配なく」
電話を切り芳香の方へ向き直る。
「兵部さん良いってさ」
「ええ!?」
「今電話で聞いたら、よろしくって言ってたよ」
「……」
「いこうよ、すぐ近くに美味しい串料理屋があるんだ」
薫樹がダメだと言わないことが芳香を複雑な気分にさせる。
「ですね、じゃ、いきます」
あまり気分が乗らないが夕飯をまだ決めていなかったのでついて行くことにした。
4 続・ミントの効果
明るく元気な掛け声で迎えられ、串料理屋に入る。
まだ早い時間なのに座敷は一杯でカウンターしか席は空いていないようだ。
「ああ、残念。座敷の方が楽だよねえ」
「あ、いえ。私、カウンターの方が好きなんですよ」
今でも人前で靴を脱ぐことが躊躇われる芳香にとって、座敷に案内されるより随分気が楽だ。
今日はよく歩いていたようで、肉の焼けた匂いが芳香の空腹を促す。
「お腹空いてきたなあ」
「ははっ、いっぱい食べてよ。ここはさあ、いろんな串があるんだよ。ほら、シュラスコとか」
炭火で焼かれた肉が大きな串に刺され、カップルが嬉しそうに店員から受け取っている。目の前のメニューを見ると串カツなど揚げ物もあり、焼き鳥、シシカバブなど多国籍な串料理が並んでいる。
「へえ、美味しそう」
「しかもここはね、飲み物も色々あるんだ。お酒飲める?」
「え、強くはありませんが、少しなら」
「じゃ、とりあえずモヒート二つ」
涼介が飲み物を注文し、少しずつ串ものを頼んだ。
「じゃ、かんぱーい」
「あ、乾杯」
初めて飲むロングスタイルのモヒートの匂いを嗅ぎ、芳香はそっと口をつける。