爪先からムスク、指先からフィトンチッド
涼介、プロデュースのカフェ『ミンテ』はオープンしてから数日たったが人は途切れることなく流行っている。
芳香は久しぶりに会える真菜との時間をこのカフェで過ごしたかったが、賑やかで落ち着きがない様子にいつものオープンテラスのあるカフェに行った。
「真菜ちゃん、久しぶり」
「ほんと久しぶりだね。元気だった?」
「うん」
三ヵ月も会っていなかったので芳香はいっぱいお喋りがしたかった。
「今日はゆっくりできる?」
「うん、もうね、ほとんど決まったから大丈夫だよ。これ招待状」
「あ、くれるの? 嬉しい!」
「そりゃ呼ぶよー。来てくれる?」
「ぜったーい、いく! 何があっても行くよ!」
「ふふっ、ありがとう」
シンプルだがキラキラ光るピンクの招待状には真菜の幸せが詰まっているような気がする。
眩しく招待状を眺めていると「芳香ちゃんたちは最近どう? 何か進展した?」と真菜は優しく聞いてくる。
「えっとねえ」
特に進展はないが仲良くしている話と少しずつだが薫樹の愛情を心から感じられるようになったことを話す。
「うんうん。いいねいいね。順調じゃん」
真菜に肯定されると芳香も嬉しくなり少し自信が付く。そして薫樹と同じ会社に勤める真菜からミント王子の話題が出た。
「ミント王子がまた人気でさあー。匂宮さまとはまた違って気さくだし爽やかでイケメンだから会社中もうざわざわしちゃって」
相変わらず真菜はマイペースで他の女子社員が騒ぐ男たちに関心は薄い。
「その、ミント王子なんだけどね」
最初からの出会いとこれまでのことを包み隠さず、真菜に話す。
「んんー、なんか匂う」
「えっ? ごめん。あたしかなあ?」
「やだっ、ふふっ、違うわよ。――そのミント王子よ」
「ん? ミントのいい匂いするねえ」
「もうっ、芳香ちゃん、気を付けて。ミント王子、きっと芳香ちゃんのこと狙ってるよ?」
「ええっ!? まさかー」
「兵部さんいるから、たぶん大丈夫だとおもうけどさ」
「ううーん。変な人だけどそんな感じはしないなあ」
「ふふっ、芳香ちゃんの方は心配なさそうだね」
「なにが?」
「んんー、ミント王子のこと好きにならなさそうってこと」
「やだぁー、ならないよー」
男女の機微に疎い芳香は真菜の話があまり理解できなかったが、やはり薫樹という恋人がいるのだから誤解を招くような行動は慎もうと心に決めた。
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