爪先からムスク、指先からフィトンチッド
和也は目をウルウルさせ、勃起を必死で隠していた。
そのまま時間があればわずかな時間で真菜と和也は繋がったが、昨日はそんな時間がなく和也を置いて、真菜は自宅へと戻った。
「あの後自分でしたのか聞いてやろう」
くくっと思い出し笑いをしてしまい、人目をハッと気にして適当な野菜をかごに入れる。

二人きりになったらしたいことはいっぱいある。
「目隠しいいなー。スパンキングははずせないし」
新居探しに一番骨を折ったのが防音だ。鉄筋コンクリート造りの角部屋を選び、ペット可のアパートを選んだ。
自分たちが静かに暮らしたいのではない。音がよりごまかされやすい環境を選んでいる。

真菜が「バイブの振動音って案外響くみたいだものね」と和也に告げると、彼は目を泳がせながら「ど、どっちが使うんだよぉ」と大きな身体をもじもじさせた。
「ああー、楽しみだなー」
ご機嫌で買い物を終え、真菜は精力のつくメニューを考えながら帰宅した。

6 宮と王子
研究開発のピークを終えて薫樹は帰宅し自室の研究室で調香をする。何を調香しているのか興味があるという清水涼介を薫樹は気にせず部屋に招き入れる。
勿論涼介は邪魔をせず、静かに調合する様子を見ている。芳香の足に触れるチャンスをうかがっていることもあるが、純粋に薫樹が個人的な調香をすることに興味があるのだ。

「清水君、ちょっといいかな」
「ええ、いいですよ」
「この部分の配合なんだが――」
「ん? どれどれ――ちょっと酢酸ベンジル多いんじゃないですか?」
「そうか」
「んんー。この配合……。フェロモン香水でも作ってるんですか? はははっ」
「流石だな。よくわかったね」
「ちょ、ちょっと、匂宮さまともあろうものがフェロモン香水なんか必要なんですか? それ会社の企画じゃないでしょう」
「うむ。実は僕と芳香はまだ結ばれていないんだが、できるだけ良い夜にしたいと思っていて――前回の配合はちょっと彼女を暴走させてしまって」
「いっ、あ、そ、そうですか、ははっ……」
眼鏡を直しながら真剣にレシピを眺める薫樹を涼介は気を取り直して咳払いしアドバイスする。
「兵部さん。真面目な話、この調合だと女性が男性に向けるフェロモン効果になりますよ。兵部さんが芳香ちゃんを落とすほうなんでしょ?」
「ああ、そう言われてみればそうだな。僕は十分、その気だからね」
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