爪先からムスク、指先からフィトンチッド
そしてその除草の時に初めて『ミント』を知り、意識するようになった。ミントは生活の至る所にある。歯磨き粉、シャンプー、チューイングガム。さりげなく生活に侵食する力そのものに涼介は感心し、気が付くとミントに相当詳しくなっていた。高校に入ってすぐに身長が伸び、自由に振舞ってきた闇のない明るい性格が日の目を見る。ミント好きが高じて、生物、化学にも好成績を残し、高身長を生かして入ったバスケット部でも注目を受ける。勿論、ミントの恩恵をそのままに大学では化学を専攻し、卒業してからベルサイユの調香学校に入学し、大手の化粧品会社に勤めた。経歴は薫樹とよく似ている。そして今はフリーの調香師、フレーバリストとして活躍中だ。「ミント王子」という呼び名は会社勤めをしているときに、社内のコンクールでマウスウォッシュのサンプルを提出した時からだ。ミントは清涼感や爽快感を得られるため圧倒的に多く使われていて、入っていないものはなかった。逆にそれを避け別の香り付けを行うものもいたが今一つパッとしなかった。涼介も勿論、好きなミントの香料を使う。並みいる強豪の中、押し分けて涼介はトップに躍り出て、そのサンプルは商品化されることとなる。そこからミント王子の快進撃が始まる。
「どうして、同じミントなのにあなたの作品がとびぬけたの?」
「当時はね。みんなミントの表面の香りにしか注目してなかったんだよ。みんな口の中をさっぱりさせて、口臭をごまかそうとするだけだった。――俺はミントを道具にしたくなかった。ミントがメインになる様に、味わいと爽快感。そしてリフレッシュとリラックスを感じられる調香を施したんだ。ただ、これじゃあ清涼飲料水みたいに飲んでしまいそうだということで、味わいを変更する羽目になったけどね」
「へえ。追及すると奥が深いのね」
まるで興味がないという表情をしていたTAMAKIが、今、涼介の話を少女のような目をして聞き入る。
「環さん。俺は――君ももっと追及したい」
一瞬の間の後、環は頷いて「シャワーを貸してもらえる?」と席を立った。
17 ミントガーデンの上で
シャワーを浴びた環は涼介のベッドの上で横たわる。
「何も身につけていなくても君は素敵だ。――香料も何も使っていないのに芳しい」
恥ずかしがることなく環は全裸の肢体をさらけ出す。
「どうして、同じミントなのにあなたの作品がとびぬけたの?」
「当時はね。みんなミントの表面の香りにしか注目してなかったんだよ。みんな口の中をさっぱりさせて、口臭をごまかそうとするだけだった。――俺はミントを道具にしたくなかった。ミントがメインになる様に、味わいと爽快感。そしてリフレッシュとリラックスを感じられる調香を施したんだ。ただ、これじゃあ清涼飲料水みたいに飲んでしまいそうだということで、味わいを変更する羽目になったけどね」
「へえ。追及すると奥が深いのね」
まるで興味がないという表情をしていたTAMAKIが、今、涼介の話を少女のような目をして聞き入る。
「環さん。俺は――君ももっと追及したい」
一瞬の間の後、環は頷いて「シャワーを貸してもらえる?」と席を立った。
17 ミントガーデンの上で
シャワーを浴びた環は涼介のベッドの上で横たわる。
「何も身につけていなくても君は素敵だ。――香料も何も使っていないのに芳しい」
恥ずかしがることなく環は全裸の肢体をさらけ出す。