爪先からムスク、指先からフィトンチッド
今まで用意周到に準備をしたことがまるで嘘だったかのように二人は唐突に結ばれた。しかしこれまでの過程があったからこそ今夜結ばれることが出来たのだとも思っている。
「不思議だな。身体を重ねると、また君が欲しいと思い始めた」
「私もそうです」
芳香の肩を抱く腕に力が込められた。
「今度、僕の家族に会ってほしい」
はっと芳香は薫樹を見上げた。
「――はい」
薫樹の家族と会い、そのあと自分の家族に会ってもらおうと芳香はこの腕の中が現実のものであることをやっと実感していた。
明日の仕事の準備があるので薫樹は少し眠り朝早く帰って行った。芳香は去って行く薫樹の後姿を見送り、部屋に戻るとまだ二人の交わった香りが残っていることに気づく。だんだんと薄らいで消えていく香りだが、甘く切なく余韻を残す。
「この香りは私と薫樹さんの……」
さっきの乱れた自分を思い出して顔を赤らめる。芳香の部屋は一階の角部屋で、ちょうどいま隣の部屋が空いている。
少しだけほっとして、もう一度部屋の香りを吸い込んだ。
初めての情事をまた反芻する。もう香りはほとんどなくなっているが、身体には薫樹の感触が残っている。
下腹部のちょっとした違和感が芳香に薫樹に抱かれたことが現実だったと思い出させる。
「薫樹さん……」
次に会えばまた抱かれるのだろうかと芳香は恥ずかしい気持ちと期待感を同時に覚える。
「また嗅ぎたい……」
お互いの香りは、お互いを心地よくさせる香りだが、交わると淫靡で官能的で甘く切ない。
出勤の時間が迫ってきた芳香は慌てて支度し、部屋の香りに後ろ髪をひかれながら仕事に向かった。
4 重なる芳香
無機質な寝室がルームフレグランスとラブローションと二人の体臭とで一気に有機的な、動物的な部屋に変わっている。
どんなに淡白な人間でもこの部屋に一歩入り、この香りの洪水に巻き込まれれば即、発情してしまうだろう。
薫樹は芳香の爪先を丹念に口づけ香りを嗅ぐ。はじめの頃の実験のように爪先から、踵、膝、脛をサラサラと撫で上げ、舐める。
芳香はすでに薫樹と騎乗位で繋がっていて、足の愛撫に喘いでいる。
「あんっ、ああんっ、あうっ、うっ、あっ、ああんっ――」
「こんな香りに満ちたことは人生で一度もないな」
薫樹は芳香の香りを堪能しながら悦に入り、芳香は薫樹の上で、腰をくねらせ快感を深く味わっている。
「不思議だな。身体を重ねると、また君が欲しいと思い始めた」
「私もそうです」
芳香の肩を抱く腕に力が込められた。
「今度、僕の家族に会ってほしい」
はっと芳香は薫樹を見上げた。
「――はい」
薫樹の家族と会い、そのあと自分の家族に会ってもらおうと芳香はこの腕の中が現実のものであることをやっと実感していた。
明日の仕事の準備があるので薫樹は少し眠り朝早く帰って行った。芳香は去って行く薫樹の後姿を見送り、部屋に戻るとまだ二人の交わった香りが残っていることに気づく。だんだんと薄らいで消えていく香りだが、甘く切なく余韻を残す。
「この香りは私と薫樹さんの……」
さっきの乱れた自分を思い出して顔を赤らめる。芳香の部屋は一階の角部屋で、ちょうどいま隣の部屋が空いている。
少しだけほっとして、もう一度部屋の香りを吸い込んだ。
初めての情事をまた反芻する。もう香りはほとんどなくなっているが、身体には薫樹の感触が残っている。
下腹部のちょっとした違和感が芳香に薫樹に抱かれたことが現実だったと思い出させる。
「薫樹さん……」
次に会えばまた抱かれるのだろうかと芳香は恥ずかしい気持ちと期待感を同時に覚える。
「また嗅ぎたい……」
お互いの香りは、お互いを心地よくさせる香りだが、交わると淫靡で官能的で甘く切ない。
出勤の時間が迫ってきた芳香は慌てて支度し、部屋の香りに後ろ髪をひかれながら仕事に向かった。
4 重なる芳香
無機質な寝室がルームフレグランスとラブローションと二人の体臭とで一気に有機的な、動物的な部屋に変わっている。
どんなに淡白な人間でもこの部屋に一歩入り、この香りの洪水に巻き込まれれば即、発情してしまうだろう。
薫樹は芳香の爪先を丹念に口づけ香りを嗅ぐ。はじめの頃の実験のように爪先から、踵、膝、脛をサラサラと撫で上げ、舐める。
芳香はすでに薫樹と騎乗位で繋がっていて、足の愛撫に喘いでいる。
「あんっ、ああんっ、あうっ、うっ、あっ、ああんっ――」
「こんな香りに満ちたことは人生で一度もないな」
薫樹は芳香の香りを堪能しながら悦に入り、芳香は薫樹の上で、腰をくねらせ快感を深く味わっている。