大嫌いの先にあるもの【番外編】
「春音、顔が真っ青よ」
「美香ちゃん、なんか気持ち悪い」
「お手洗い行く?」
「うん」

美香ちゃんに連れられ、バーを出てお手洗いに入った。
見慣れたBlue&Devilのトイレのはずなのに、内装が微妙に違う。

鏡だってもっと大きかった。

鏡?

えっ、美香ちゃんに支えられている子は誰?

「春音、どうしたの?」
「美香ちゃん、鏡が」
「鏡がどうしたの?」
「美香ちゃんと映っているのって……私?」
ぷっと美香ちゃんが笑い出した。

「おかしな子ね。当たり前じゃない。今夜の春音かわいいよ。紺色のワンピースはちょっと大人っぽいね。髪型もハーフアップにしていて素敵よ。編み込みまで作っちゃって。自分でやったの?」
美香ちゃんが私らしき人物を観察するように見つめた。

どう見ても鏡の中の私は二十歳に見えない。
顔が幼いし、身長も少し低い。
だけど自分の顔だ。

信じられない。
こんな事があるなんて。

一体どういう事?
何が起きてるの?

「春音、どうしたの?」
隣に立つ美香ちゃんが心配そうな表情を向けた。

「美香ちゃん」
「吐きそう?」
「美香ちゃん、私……」
「うん?」
「私、頭が痛い」

強烈な頭痛がする。頭が割れそう。
なんでこんなに痛いんだろう。

誰か助けて。誰か……。

黒須、助けて。

突然、身体中の力が抜けて目の前が真っ暗になった。

「春音、春音!」

美香ちゃんの声だけが聞こえた。
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