大嫌いの先にあるもの【番外編】
目を開けると、白い天井に並ぶ蛍光灯が見えた。

ここはどこ?
左腕を動かそうとしたら、点滴がついてる。

病院?

「春音ちゃん、目が覚めた?」
低めの落ち着いた声に胸が熱くなる。
大好きな黒須の声だ。

「黒須?」
ベッドの側に立っていたスーツ姿の黒須が、心配するように腰を折って私を覗き込んだ。

「黒須、私どうしたの?なんか頭痛いし、変な夢を見たの。夢の中で美香ちゃんとトイレに行ったんだけど、鏡に中学生の私が映っていて、それで」
黒須の腕を掴みながら話すと、黒須が困ったように微笑んだ。

「春音ちゃん、混乱しているんだね。落ち着いて。もう大丈夫だから。倒れた春音ちゃんを病院に運んだんだよ。CT撮ってもらったけど脳に疾患はなかったから安心して。ドクターの話では貧血らしいよ」

「私、倒れたの?」
「うん。ジャズクラブのトイレで」
「ジャズクラブって、Blue&Devil?」
「そうだよ。今夜は美香のライブがあって僕と観に行っただろ?」
「美香ちゃんのライブ……美香ちゃん、生きてるの?」
黒須が驚いたように目を見開いた。
「まるで美香が亡くなったみたいな言い草だな。一体どんな夢を見たんだい?美香が聞いたら怒るぞ」
「えっ、ちょっと待って。だって美香ちゃんは強盗に」
「強盗?」
「春音、気づいたの?」
ベッドの側に来た人物の顔を見て指先が震える。
嘘。こんな事あるはずない。

「春音、気分はどう?大丈夫?」
ベージュ色のロングカーディガン姿の美香ちゃんが心配そうな顔をした。
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