恋と、嘘と、憂鬱と。

充希くんの手が私の頬に触れる。

少し冷たい指先から彼の緊張が伝わってきて、思わずギュッと胸が締め付けられた。

「それに季里はもう1度、颯真くんとちゃんと話したほうがいいよ。その辺スッキリさせないと次に進めないでしょ。…言いたいこと我慢すんな」

フッと微笑んで、充希くんは私の背中を押してくれる。

「…うん」

コクリと強く頷いた。

そう言えば、真凛ちゃんにも似たようなこと言われたっけ…?

「よし。決まり。じゃあ行こう」

「うん…って、今から?」

「そ。今戻ればまだ間に合うでしょ。あと、今、決心したうちじゃないと、また季里我慢しそうだし?」

驚く私の腕を取り、来た道を戻る充希くん。

う…、見透かされてる…。

確かに私の性格上、時間が経てばまたうじうじ考え込んでしまうかもしれない。


「……」


図星をつかれて、黙り込んでしまった私に対して、充希くんは小さくククッと笑みをこぼしたのだった――。

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