恋と、嘘と、憂鬱と。
しかし、その視線は…颯真くん、いや久瀬先輩に向けられていた。
「…そうですね、すごく似てると思います…ただ、私も最後に会ったのが5年前で…当時小学生だったので。今の姿知らなくて……だから、間違えちゃったのかもですね。あの、久瀬先輩も急に、すみません…驚かせちゃって…」
曖昧に微笑みつつ、私はそう言葉を紡ぐ。
「…別に。気にしてない」
ふいっと、私から視線を外しながら久瀬先輩は、素っ気なく言い放った。
…どうしよう。なんか微妙な空気になっちゃったかも…。
そう思った私はその空気を打破しようと、
「…あ、えっと…私、そろそろ帰ります!約束があるので…それじゃ、失礼しますね」
目の前の先輩達にとりあえず頭を下げ、その場を後にする選択肢をを選んだ。
「季里ちゃん、気をつけてね!」
「堀田、またな〜」
廊下で手を振る霧谷先輩と速水先輩の横で
興味なさそうにスマホを弄っている久瀬先輩。
私もそんな3人に手を振りながら、ようやく帰路についたのだった。