婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
だけど私のような若い女がひとりで夜街を歩く危険を、まったく理解していなかった。
「おー、ボス! うまく釣れたなあ! ガハハハハッ!」
「おお! 今回は上玉だな。いくらで売れっかなあ」
「ウヒャー! なあ、ボス! 味見してもいいか!?」
「ああ? 商品価値が落ちんだろ、バーカ! どこに売るか決まるまで触んなよ!!」
「ちぇー、ベッピンなのになあ、つまんねえの」
世間知らずな私はあっさりと騙されて、人身売買の組織に捕まっていた。
市井に下りてからわずか一時間ほどで、なけなしの金貨はスリに取られ無一文になり、そこで助けてやるという甘い言葉にホイホイついていったら、部屋に連れ込まれそうになって荷物を置いて逃げてきた。
逃げた先で街の破落戸に絡まれて、助けてくれた青年は私の救世主に見えた。サラサラの金髪にスカイブルーの瞳で爽やかな好青年だった。
すっかり信用してついてきたら、組織の拠点である廃業したホテルに連れてこられたのだ。さっき絡まれた破落戸も仲間だとは想像もしなかった。