婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!

 帝都から出るどころかあっという間に身包みを剥がされ、ほんの数時間で婚約破棄されたことや家族に見捨てられたことが霞むくらいひどい目にあった。

 魔封じの腕輪を青年につけられしまって、得意の闇魔法も使えない。もう助けてくれる人はいない。いや、夜会のときだって助けてくれる人なんていなかったと思い直す。

 今は生き残ることを考えよう。ひどい目にあったけど、どうにかしてここから抜け出せば……!

「ああ、とりあえず手荒な真似はしねえよ。お前みたいななにも知らねえお嬢様ってのは価値が高いんだ。身代金を請求してもよし、変態貴族に売ってもよし。買い手がつくまでは世話してやるよ」

 それならば、私は確実に後者になるだろう。なにせ勘当された身だ。

 そして元婚約者もそうだが、金髪碧眼の男は信用してはいけないと魂に刻み込んだ。

 さらに、ひどい目にあいすぎて感覚が麻痺してしまったのか、とりあえず飢えることはなさそうなのでツイてる!と思ってしまった。人間は命の危機に瀕するとひと皮もふた皮もむけるみたいだ。

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