婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
『はああ……呪いをかけるのがこんなに難しいなんて、盲点だったわ……侯爵家だけじゃ怨念が足りないのかなあ……』
そこで浮かんだのは生々しい傷跡ごと心の奥深くに沈めた、もうひとつの残酷な現実だ。正面から受け止める勇気がなくてずっと目を逸らしてきた。
『あー、もう、いいや! 何回やってもダメなんだから、ぶっ込んでみるしかないじゃない!』
あまりにできなくて、ヤケになって婚約破棄された時の怨念も込めてみた。
私に愛を囁いていたのに信じてくれなかった元婚約者に対する悲しみと憤り、キラキラと輝く義妹は最後の希望だった婚約者を卑怯な手を使って私から奪い取った。後から知ったけど子供ができたというのは、私に諦めさせるための嘘だった。
そして、それを認めた上で私を突き放した父親、見て見ぬ振りした兄。私を嘲笑うだけの貴族たち。
【呪眼(カース・アイ)】
全部全部、渦を巻くようなドス黒い怨念をありったけマスクに込める。
偽物の愛を囁くなら、そんな愛など壊れてしまえばいい。
この仮面をつけたものは、真実の愛に触れないと解呪できない。そんな呪いにしよう。
邪念があるものは指一本すら触れられない、触れた場合はのたうち回るほどの激痛を与えよう。
そうして滅んでいけばいい。偽りの愛なんてもういらない。
魂の叫びとも言える怨念をハーフマスクに込めた。時間を忘れて込め続けた怨念はしっかりと呪いになって定着している。
『で……できたー!!』