婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
絢爛豪華な皇帝の謁見室で、私は窮地に立たされている。
数段高い位置に、ひと際背の高い重厚な造りの椅子が置かれ、長い足を優雅に組んだ悪魔皇帝が私を見下ろしていた。その男の凛とした低めの声が響き渡る。
「いいか、よく聞け。この仮面のせいで皇后候補にはことごとく逃げられた。俺に近寄ってくるのは邪念があるものだけらしい。つまり女など信じられないということだ」
「そうね、でもそれは立場的に仕方ないんじゃないかしら?」
だってそんな人しか寄ってこないのは、私のせいではないわよね?と伝えてみる。
「立場的なものは理解している。邪念を持っていたところで俺がうまくコントロールしていれば済む話だ」
「…………そうね」
「だが、そんな女ですら伴侶にできないと後継者問題が出てくる」
確かに、ディカルト帝国の皇帝ともなれば後継者は必須で避けて通れない問題だ。しかもこの悪魔皇帝は即位する際に一族を皆殺しにしたと聞くから、現状のままだと目の前の男で皇族の血は途絶えることになる。
「俺は皇帝になる時に直系の一族は根絶やしにしたからな。養子を取ることもできない。だが無駄な争いを避けるためにも後継者は必要だ」
「それは、理解できるわ」
周りを黙らせるためにも皇帝の血を引く後継者は必要不可欠だ。
なんだか私の呪いのせいで後継者ができないみたいに言ってるけど、そもそも一族を根絶やしにしたからでは……と思ってしまう。でも悪魔皇帝の眼光が鋭すぎて、心内にそっと秘めておいた。