婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!

「どうした? 魔女は責任を取らないとでもいうのか?」
「そんなことはないけど……だって呪いを解けばいいだけじゃない? それなら今ここで結婚しなくてもいいわよね?」
「それはできない。解呪した後なら解放できるが、あいにく女は信じられないからな。解呪するか子を産むまでは逃げ出せぬよう拘束させてもらう」

 痛いところを容赦なく的確についてくるあたりがさすが悪魔皇帝だわ!

「俺の代で終わればまた国が荒れて、民にしわ寄せがいく。だからこちらも引けない」

 それを言われると私もなにも言えなくなる。悪魔皇帝と呼ばれている割にはまともな意見だ。

 ふと周りに目を向ければ、この部屋にいる五人の重鎮たちも固唾を飲んで見守っていた。
 悪魔皇帝はさっさとサインしろとばかりに私を睨みつけているし、目の前の側近はニコニコしたまま無言の圧力をかけ続けている。

 魔力封じの腕輪はしっかりと手首にぶら下がっていて外れないし、いつの間にか背後に回ったブレイリー団長が退路を塞いでいる。

 そもそもなぜこのような書類がすでに準備されているのか。だってこの側近はノータイムで出してきたのだ。もしかして、もしかすると私はハメられたのでは?

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