婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
「そうよ、あなた。あんな気味の悪い魔女よりも、聖女で愛らしいシャロンの方が皇后にはふさわしいわ」
「それは確かにそうなんだが……」
「もういいですわ! わたくしが直接陛下に謁見して、どういうことなのか聞いてまいりますわ!」
そうしてわたくしは勢いよく屋敷を飛び出して、侯爵家の馬車で皇城へと向かった。その日のドレスは薄い水色のドレスで、わたくしの可憐さが引き立つお気に入りのものだ。
皇城に着いたわたくしは陛下に謁見するために、執務室へと向かって進んでいた。魔女の赤い瞳と聖女の黄金の瞳はそれだけで特別な存在としての証になる。だからわたくしが皇城の奥へ進んでいっても誰も咎めない。
「聖女様、失礼ですがこの先へはどのようなご用件でいらっしゃったのですか?」
そんなわたくしに声をかけてきたのはブレイリー団長だった。近衞騎士を率いる団長で皇帝の腹心でもある。ちょうどよかった、この男に案内させよう。
「ブレイリー団長、ちょうどよかったわ。陛下にお会いしたいの。案内してくれるかしら?」
「……そのような謁見の予定は聞いておりませんが?」
「ええ、そんなものしていないわ。でもわたくしは聖女なのよ。問題ないでしょう?」
「確かに聖女様は特別なお方ですが、私の主人は皇帝陛下です。申し訳ありませんが、謁見申請者以外は通すなとのご命令ですのでお引き取り願いますか?」
「えっ、ちょっと……!」
「聖女様がお帰りだ。ご案内して差し上げろ」
ブレイリー団長はそう部下に指示を出して、その場から足速に去っていった。わたくしはなす術なく乗ってきた馬車の前まで連れていかれたのだった。