婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
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今日も朝から空は青く澄み渡り、まだほんのりと冷たい風が薬草たちを揺らしている。見た目は決して美しいとは言えないけど、その深緑の葉に含まれる効能は素晴らしいものだ。
私が丹念にお世話をしてきたのと、レイが手配してくれた庭師ノーマンの腕がよくてすくすくと薬草たちは育っていた。
「さすがノーマンね、私がひとりで育てるより薬草ちゃんたちが生き生きしてるわ」
「ははっ、そりゃぁ、皇后様が愛情込めて育ててらっしゃるからです。こんなに瑞々しく葉の厚い薬草はお目にかかれませんよ」
そう言って薬草の葉に触れるノーマンの手は優しく、その瞳には慈愛がにじんでいる。皇城に来てからひと月近く経ち、すっかり打ち解けて顔を合わせれば世間話をする仲になっていた。
「そうかしら? ひとり暮らしで動物も飼えなくて、薬でも作ろうと薬草を育ててるうちに愛着が湧いたのよね」
「へえ、ひとり暮らしされてたんですか。皇后様がなんでもご自身でこなされるのに納得です」
その時、野草園の奥の茂みがガサガサと大きく揺れた。