婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
魔女の作る薬は、一般的に売られている回復薬とは比べ物にならないくらい効果が高い。それゆえ『魔女の秘薬』と呼ばれている。
初代魔女の薬の知識が代々受け継がれていて、複数の薬草を組み合わせて作るのだが、そのレシピが二万パターン以上あった。
相手の状態をよく観察して、症状にあった配合を考える。レイの場合は過労と不眠による睡眠不足、それから過度のストレスで他にも不調が出ているようだった。
まずはこわばった身体をほぐすためのリラックス効果の薬草と、疲労回復に効果のある薬草、それから不眠に効果のある薬草を混ぜて丸薬を調合した。
「皇帝だから多少の無理が必要なのもわかるけど、無茶しすぎだわ。はい、これが薬よ。ありがたく飲みなさい」
「ああ、ありがとう」
意外と素直な反応に驚きつつも、丸薬を渡すために手を伸ばしてもレイに受け取る気配がない。
「ちょっと、手を出してよ」
「……実は薬が苦手なんだ。だが、セシルが手伝ってくれるなら飲めると思う」
ちょっとだけ恥ずかしそうに俯く姿に人間らしさを感じた。いつもの太々しい態度はなく、しょぼくれた犬みたいだ。ちょっとだけかわいいと思ってしまう。