婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
「薬が苦手って……子供じゃないんだから」
「子供の頃に毒を盛られてよく解毒薬を飲んでたんだが、それがあまりに不味くてトラウマになってるんだ」
思ったよりヘビーな内容で返す言葉もない。
「確かに味はよくないわね。どうすればいいの?」
「俺は目を閉じて口を開けてるから、飲ませてほしい」
「わかったわ」
軽く了承してから、はたと気付いた。レイは素直に目を閉じて、口を開けて待っている。
これは、いわゆる恋人同士がよくやる『はい、あ〜ん♡』ってやつではないだろうか?
いやでも、幼い頃のトラウマって言ってたし、自分で飲めと突き放すのも非道な人間の気がする。微塵も甘い空気はないけど、気が付いてしまったら羞恥心が込み上げてきた。
「セシル、早くしてくれ」
レイがぎゅっと拳を握りしめるのを見て、私が恥ずかしがっている場合ではないと反省した。トラウマがあっても懸命に立ち向かおうとしている人に対して、躊躇した自分が情けない。