婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!
覚悟を決めて、レイの口へと丸薬を運んだ。そっと丸薬をレイの艶のある唇の奥へと置こうとしたところで、口が閉じられてしまった。
「ひゃあああっ!!」
指先に突然感じた柔らかい感触と、火照りそうな熱に驚いて奇声を上げる。いつの間にかレイの瞳は開かれていて、私をまっすぐに見つめていた。勢いよく手を引き抜いて、レイと距離をとる。
「ちょ、ちょ、手、食べっ! なんでっ!?」
言葉にならない感情は、みるみる私の顔を赤く染め上げた。
私の指がレイに食べられてパニック寸前だ。それなのに当の本人はなんでもないように水で丸薬を流し込み、ふうとひと息ついている。
「セシルが飲ませてくれる薬は、美味いな」
「ト、トラウマじゃなかったの!?」
「トラウマだ。だから褒美がないと飲む気にならん」
「褒美……? 今の流れのいったいなにが褒美?」
「それは、いろいろ……な」
レイの黒い笑顔に、また振り回されたのかとがっくりと肩を落とした。