婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!

「くくっ、相変わらず薬草を愛でてるのか。セシル」
「えっ、レイ!? もうそんな時間? ごめんなさい、すぐ部屋に戻るわ」
「いや、今日は時間の余裕があるから早めに来ただけだ」

 振り返ると悪魔皇帝がニヤニヤしながら立っていた。
 私が薬草をかわいがる様子が面白いらしく、たまに時間ができるとこうやって迎えにきて背後から声をかけるのだ。

「ちょっと! いつまで笑ってるのよ!」
「セシルが楽しそうに薬草の世話をしているのが、見てて飽きないんだ……かわいらしくてな」
「もう! 私は真面目にやってるの! そんなにからかうなら、この薬草園はレイだけ出禁にするわよ!?」

 こんな土まみれになっている私に、いつも笑いながら声をかけてくるのだから本当に感じが悪い。こんな風に抜き打ちで来るのも勘弁願いたい。

 いつも驚く私を見て笑うのだから、仲良し演技をするのに飽きて嫌がらせしているのだと思っている。

「ほう、俺の城で俺が入れない場所があるとは驚きだな」
「確かに場所を借りてるのは私だけど……! あー、もう! 今度の薬はめちゃくちゃ苦く作ってやるんだから!」
「まあ、それはそれで目が覚めそうだな」

 レイに文句を言っても軽く受け流されて、さらに腹が立った。
 これで執務がおざなりなら来るなと言えるけど、皇帝の仕事もきちんとこなしていてつけいる隙がない。

 たまにイリアスと話しているのを聞くけれど、民に寄り添った政策を進めているようで、努力家で有能なのだということもわかった。


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